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映画『リトル・エッラ』に描かれた、春の陽光のような愛

© 2022 Snowcloud Films AB & Filmbin AS

愛についての映画を観るのが好きだ。これは私が映画好きになってからずっと思っていることで、幾千という映画から今夜観たい映画をセレクトするときの個人的なスローガンとしている。「愛を描いた映画が観たい」。なぜそう思うのか。おそらく、私自身が人を愛したり愛されたりということに興味があるからなのだと思う。時に不可解で奇妙にも感じるそれの輪郭を探したい。決して単純ではなく、ふるえる線のように繊細な輪郭を。

愛は映画の中にひっそりと潜んでいる。だから、最初は気づかないことが多い。最近観たスウェーデン発の映画『リトル・エッラ』もそうだった。ビジュアルポスターには溌剌と笑う女の子ーー彼女の名前はエッラ。叔父のトミーが大好きで、彼こそが自分の親友だと信じて疑わない。ある日彼の恋人であるスティーブがやってきて、エッラの心は乱される。なんだ、こいつは!スティーブと幸せそうに額をぶつけ合いながらはにかむトミーを見て、エッラは言いようのない気持ちに襲われる。

スティーブを追い払わなきゃ!一大決心をしたエッラは、花屋の息子で転校生のオットーとともに彼を追い出すため悪戯を仕掛ける。砂糖を塩に変えたり、オットーの”ともだち”であるネズミをスティーブのカバンに入れたり。思いつく悪戯は実に子どもらしく奔放で、スティーブは策略に引っかかりながらもエッラに優しく接し続ける。もしかして、スティーブはそんなに悪いやつじゃないのかもーーふたりの愛に気づいたエッラが起こした行動とは。

© 2022 Snowcloud Films AB & Filmbin AS

作中にはいくつかの、可愛らしい花の栞に添えたくなるような台詞が登場する。私が好きだと思ったのは、叔父トミーが発する言葉だ。

「愛で人はおかしくなるんだ」

エッラが理解できない大人同士の愛を、少し申し訳なさそうに言うトミーの言葉。そう、この映画は、愛の話なのだ。トミーの愛、スティーブの愛、そして、エッラの愛。3人の愛は決して誰かを独り占めするものではない。幼さゆえ、物語が始まったばかりのエッラはトミーこそが自分の”特別”だと思っているし、彼から与えられる愛を独占したいと思う。しかしちゃんと気づくのだ。好きな人の”好きな人”を愛することが、人生をもっと素敵にさせることに。

© 2022 Snowcloud Films AB & Filmbin AS

“分かち合った愛は半分ではなく
倍になることを教えてくれる”

本作に寄せられたレビューに深く頷いたと同時に、心がじわりと満ちていくのを感じた。この映画を、私の「愛にまつわる物語をしまっておく引き出し」の中にそっと入れておこう。落ち込んだときに食べるカップケーキのようなさりげなさと可愛さの詰まった、大切な物語として。

どうか、エッラの笑顔を大切な人と一緒に劇場へ観に来てほしい。観終わったら、人を愛することについて春の風に吹かれながら話してほしい。

そして、小花の咲く季節に降り注ぐ陽光の中に、彼女の姿を探してほしい。きっととびきりの笑みを見せてくれるだろう。

© 2022 Snowcloud Films AB & Filmbin AS


【作品情報】
映画『リトル・エッラ』
監督:クリスティアン・ロー
出演:アグネス・コリアンデル、シーモン・J・ベリエル、ティボール・ルーカス 他
原題:LILL-ZLATAN OCH MORBROR RARING|スウェーデン・ノルウェー|
2022|81分|カラー|スウェーデン語・英語|フラット|5.1ch|映倫G|
日本語字幕:高橋彩|字幕監修:速水望|後援:スウェーデン大使館・ノルウェー大使館|
配給:カルチュアルライフ|宣伝:VALERIA|© 2022 Snowcloud Films AB & Filmbin AS
公式サイト:https://culturallife.co.jp/little-ella

【公開情報】
2024年4月5日より、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺、
シネマート心斎橋 他全国ロードショー

  • 記事を書いたライター
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安藤エヌ

日芸文芸学科卒ライター。映画と音楽を中心に評論、レビュー、コラム等を執筆。「今」触れられるカルチャーについて、新たな価値観と現代に生きる視点で文章を書くことを得意とする。

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