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ミュージカル映画となって帰ってきた『ミーン・ガールズ』、注目はレジーナ役のレネー・ラップ

映画『ミーン・ガールズ(原題)』ポスタービジュアル – Paramount Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

アメリカの高校を舞台した作品は、特別な魅力がある。『ブレックファスト・クラブ』では異なる個性を持つ学生が一堂に会し、『アメリカン・グラフィティ』では高校卒業後の進路に悩む男女が描かれた。『ハイスクール・ミュージカル』ではキラキラした高校生活に音楽やダンスが加えられ、さらなる魅力で世界中の10代を虜にした。 

そして今でも支持されている、ピンクが印象的な『ミーン・ガールズ』は今年で20周年。ロザリンド・ワイズマンによるノンフィクション『女の子って、どうして傷つけあうの?』を原作とし、同作の映画化権を獲得したティナ・フェイによって2004年に公開された。

■思春期ならではの関係性を色濃く描く人気映画

物語は、12年間アフリカで暮らしていた主人公・ケイディがアメリカの高校に引っ越してくるところから始まる。最初は馴染むことができずに悩んでいたケイディだったが、ジャニスとダミアンに出会い、学校内にある派閥や人間関係を教えてもらう。そしてケイディは、学校の誰もがひれ伏す一軍グループ“プラスチックス”のリーダー的存在であるレジーナ、天然なカレン、レジーナに従順なグレッチェンの目に留まり、ランチを一緒にとる仲になっていく。一方ケイディは、ジャニスからレジーナが悪女であることを聞き、さらに好意を持っているアーロンを奪われたことをきっかけに、ジャニスとダミアンと共にレジーナを陥れるための画策を練る。結果的にその作戦は成功し、レジーナは全校生徒からの憧れを失うことになるが、純粋だったケイディはアーロンを軽視し、まるでレジーナのコピーのようになってしまう……。

2004年の映画でケイディを演じたのは、当時ティーンの憧れの的だったリンジー・ローハン。そしてレジーナ役は、今や恋愛映画の歴史を語る上で欠かせない存在となったレイチェル・マクアダムス、カレン役は『マンマ・ミーア!』『レ・ミゼラブル』で大成功を収めたアマンダ・セイフライド、そしてグレッチェン役をレイシー・シャベールが務め、映画化を実現させたティナ・フェイも数学教師役として出演している。

“プラスチックス”のルールはなんとも複雑。タンクトップは一日おきで、ポニーテールは週に一度。水曜はピンクの服を着て、ジーンズは金曜だけ。ルールを破った場合はランチを一人で食べることになる。高校生らしく体形に悩んだり、毛穴を気にしたりする部分には少し共感もするが、“悪口ノート”を作って周りを見下しているあたりはカースト上位の怖さを感じざるを得ない……。

■2018年にブロードウェイ化、そしてミュージカル映画に

そんな名作ティーン映画になった『ミーン・ガールズ』は2018年からブロードウェイでも上演。トニー賞では作品賞、主演女優賞、脚本賞など、最多の12部門でノミネートされた。筆者も2019年11月に実際にブロードウェイで鑑賞したが、映画版の内容に音楽が足されることによって物語の勢いが増し、長い上演時間の中でも退屈することなくずっとワクワクした気持ちだったことを覚えている。日本でも2023年1月から生田絵梨花主演でミュージカル版が上演されていたことも記憶に新しい。

そして今年、2020年代の高校生らしさを加え、新たに『ミーン・ガールズ』がミュージカル版として映画でカムバックした。ミュージカル版ではケイディ役を『ナイスガイズ!』など幼い頃から活躍してきたアンガーリー・ライスが演じている。

今回注目したいのは、レジーナ役を演じたレネー・ラップだ。彼女はブロードウェイ版でも19歳でレジーナ役を熱演した彼女は、ティモシー・シャラメの姉ポーリーン・シャラメ主演ドラマ「セックスライフ・オブ・カレッジガール」でメインキャラクターの一人、お嬢様気質なレイトンを2シーズンに渡って演じた。最近は歌手活動に力を入れており、2022年にEP『Everything To Everyone』でデビュー。Instagramのフォロワーも267万人を超えるなど、今大注目のアーティストだ。

レネーが演じるレジーナは、レイチェルが演じたものとは少し異なる雰囲気を纏っている。2004年のレジーナは可愛らしさが前面に出ていたが、レネーのレジーナにはさらに女性らしい“強さ”を感じることができるのだ。歌声と佇まいから感じられる迫力と強さゆえ、女性に限らず全ての人間が憧れの対象として彼女を崇めている。そして彼女のことをSNSに挙げているシーンからも、2024年に存在する“プラスチックス”をよりリアルに想像することができる。嫌な女だと分かっていながらもなぜか「レジーナに好かれたい」という気持ちが生まれてしまう、レネーの人を惹きつける力が表れているのだ。

劇中で歌われる音楽はブロードウェイで歌われていたものが多く、「What Ifs」と「Not My Fault」は映画のために書き下ろされた楽曲だ。オープニング楽曲として視聴者を惹きつける「What Ifs」でレネーは作詞を担当。エンドロールと共に流れる「Not My Fault」でも作詞に参加し、ラッパーのミーガン・ジー・スタリオンとともに歌唱している。ミュージカル版映画はレネーのプロモーションビデオとも言えるくらい、役者とミュージシャンという2つの役割を果たすレネーの才能と魅力が存分に発揮されている。

また、レネーのほかにも『モアナと伝説の海』で主演を務めたアウリイ・クラヴァーリョがジャニス役で出演。「エミリー、パリへ行く」などでも知られるアシュレイ・パークはブロードウェイ版でグレッチェンを演じていたが、今回はフランス語教師役で出演している。さらに、2004年にケイディを演じたリンジー・ローハンもカメオ出演しているのでお見逃しなく……。

レジーナに認められたいという気持ちが自分らしさを失わせ、レジーナのクローンのようになってしまうこと。そしてそれは、誰にとっても良い結果を生まないということを教えてくれる本作。群れずに自分の軸を持って行動することで、それぞれの道を見つけて大人になっていくのだ。

中学・高校生の時期は考え方も未熟で、自分を強く見せるために、他人の陰口を言ったり、本来の自分を隠して好かれる格好をしたりすることもあるだろう。今、学生でなくても、自分の利益しか考えずに行動してしまったことは誰しもあるに違いない。しかしそれは本当に正しいことなのか? 今一度考えなおすチャンスをくれるのが『ミーン・ガールズ』だ。

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伊藤 万弥乃

海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。

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