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映画『ラブ・アクチュアリー』が教えてくれた、甘いバノフィーパイとさまざまな愛の形

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クリスマスと言えば、どんな映画が思い浮かぶだろうか?

定番の『ホーム・アローン』や『ハリー・ポッター』シリーズの煌めくクリスマスシーン、古くは『素晴らしき哉、人生!』など愛されてきた映画ばかり。その中にはクリスマスのロンドンを舞台にした『ラブ・アクチュアリー』もよく挙げられる。

筆者が初めて『ラブ・アクチュアリー』を観たのは、おそらく高校生の時だ。様々な大人たちの“愛”の物語が交錯する、その目新しさに夢中になったのを覚えている。それ以来、お気に入りのクリスマス映画として、自分のメモリに刻まれた。 

そして数年後、映画雑誌を集めていた筆者は、2016年4月号「アンド プレミアム/映画が教えてくれること。」の、映画に登場する英国菓子について書かれているページが目に留まった。『ラブ・アクチュアリー』に登場するバノフィーパイだ。コンデンスミルクとバナナとチョコレートでできた甘~いパイ。曖昧な記憶で「こんなの出てきたっけ?」とは思いつつ、甘いものが大好きな筆者はすぐに作り始めた。

このバノフィーパイは、ジュリエット(キーラ・ナイトレイ)が夫ピーター(キウェテル・イジョフォー)の親友であるマーク(アンドリュー・リンカーン)の家を訪ねた時に持ってきたものだ。 マークに嫌われていると思っていたジュリエットが、自分の結婚式のビデオを確認させてほしいという口実のもと、マークに自分を友人として受け入れてもらうために訪れた。

一方でマークは、実はジュリエットに思いを寄せており、彼らの結婚式で回していたビデオにはほとんどジュリエットしか映していなかったのだ。だからこそ、自分の気持ちがバレないようにするために、素っ気ない態度を取っていた。

高校生だった筆者は「結婚している相手に対して、そんなのありなの……!」と衝撃を受けた。まだまだ子供だったのだと思う。人の気持ちは「相手が結婚しているから」「複雑な事情があるから」という現実を簡単に飛び越えるものなのだと、大人になった今では映画を通して学んでいる。

首相と秘書、恋愛に縁のない作家の男、浮気の危機迫る夫婦、妻/母を亡くした血のつながらない親子など、普段は交わらない人々の人間模様が、画面を介して少しのつながりとして投影される。実際に人間同士もこうやって少しずつつながっているのだろう。

ジュリエットの話に戻すと、あの有名なフリップで想いを伝えるシーンも彼らの物語の一部だ。ピーターが家の中にいるため、玄関を訪れたマークは声に出して本心を打ち明けることができない。その秘密の2人だけの空間で、マークはユーモアも含んだ“文字”で気持ちを表現するのだ。叶わないとわかっていても、自分の気持ちに嘘をつかない。そんな愛があってもいいのだと気付かされた。

「クリスマスは愛する人と過ごすべきだ」と劇中でロックスターが言うように、一年に一度はそんな日があってもいいのではないか。日本で言うとお正月なのだろうか。ともかく、これからやってくる年末年始は、きっと世界中で愛が溢れる季節なのだろう。いや “Love actually is all around”だ。この季節でなくても、愛はどこにでも溢れているのかもしれない。

寒くなってきて寂しさも感じる時期だが、休暇に向けて仕事も掃除も片付けて、愛する人たちの元に急ぎたくなる、そんな気持ちにさせてくれる特別な映画だ。

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伊藤 万弥乃

海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。

  1. 映画『ラブ・アクチュアリー』が教えてくれた、甘いバノフィーパイとさまざまな愛の形

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